タイラント日記

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一億総ツッコミ時代に現れた爽快すぎる豪放磊落ムービー:【マッドマックス 怒りのデス・ロード】

※以下結末までネタバレを含んでいますので未見の方はお控えください。

凄かった…。

 

観終わったあとにただ一言そう呟いてしまった。これは凄い映画でした。奇跡の映画と言ってもいいんじゃないでしょうか。実はDVDレンタルまでスルーする予定だったんですよ。それは前作サンダードーム鑑賞後の映画館から帰り道が一足お先に怒りのデスロードになってしまった苦い記憶や、新作公開に至るまでがグダグダすぎて期待値がダダ下がっていたこと、そして何よりあまりにも衝撃的で破天荒だったマッドマックス1と2を撮った当時のパワーが、歳をとりすぎたジョージ・ミラーにはもう無くなってしまってるんじゃないのか?という心配。すみません全て杞憂でした。脱帽でございます。余計なお世話でした。御大さーせん!自分舐めてました!あざーす!凄い映画あざーす!

撮りたいものを撮るんだ!という凄味

基本的にマッドマックス第一作目は低予算映画で、しかもその低予算の殆どをジョージミラーは登場するバイクや車の改造費に当てたという「オラが観たいものを撮るんだす!」というある意味究極の極私映画。それが無軌道かつ破天荒なB級でありながらド級の映画になりえたバックボーンであると個人的に考えているのですが、その原動力でもあった御大の気骨が齢70にして未だ衰えていなかったのはまさに驚異。ぶっちゃけて言えばジョージ・ミラーは単に自分の考えた世紀末カーチェイス撮りたかっただけじゃねーのか?とすら疑わせる、彼の極私的欲望で全てを吹き飛ばす勢いがこの映画にはありますよ。台詞いらないんじゃね?とすらw

 

実際には映画の背景に物語が仕込まれてることは、観客にもちらほらと伝わってきます。主人公マックスがたびたびフラッシュバックで見てしまう、小さな子供をはじめとするマックスを苛む死者達の幻影。これは何らかの理由で彼が救えなかった過去の産物なんでしょう。彼が死ぬことを待ち望むかのような死者達の幻影。おそらくマックスが過去の失敗によって背負った挫折と絶望。そして同時にその体験からくる自殺願望なのか?とかですね。敵との闘いの中ですら死者である子供の幻影を見てしまうマックスは、子供の幻影が襲いかかってきた瞬間思わず手で顔をかばってしまうのですが、このかざした手が飛んできた矢を防ぐことで、間一髪彼は命拾いをするのです。これはマックスの「生きたい」という、心の奥底にあった気持ちが現れたシーンだったのか?と考えさせられるシーンです。また愛を知ってウォーボーイズから脱却するニュークスの物語は、現実でも問題が多いカルトからの愛による脱却劇がベースなのかな?とか、特攻という手段を選ぶウォーボーイズ達に情勢不安な世界で愛国心が戦争へ向かう流れを否定する裏ストーリーが隠されているのかな?等々。伏線なのか裏設定なのか分かりませんが、少なくとも観客に考えさせる部分が全く無い、勢いオンリー映画という訳でもないのです。

 

でも正直この映画観てたら「まあ…そんなことどうでもいっか!」という気分になっちゃいますよねw それはもう仕方ないw ぶっちゃけストーリー的にもひねりも無いし、細かな設定はツッコミだしちゃうとキリが無くなっちゃいますから。なんでそんなとこで火の出るギター弾いてんだよwとか、なんでわざわざ危険な攻撃方法とってんだwとかね。悪く言えば行き当たりばったりムービーですらあるんですよ。世はまさにインターネット時代。アニメに出てくる武器の持ち方が本来と違うってだけで制作会社が炎上する時代ですよ。ツッコもうと思えばもうキリが無いマッドマックス。1や2が公開された70〜80年代じゃないんだから、これだけ穴が多い映画は大炎上しても不思議じゃありません。でもこの映画観たら思っちゃうんですよね。

 

そんなこと言うの野暮だな」って。

 

この言葉ほど的確な言葉は無いと思うんです。野暮。いやマジで。この映画にツッコむこと自体野暮ですよ。アホになって「わー!すげー!すげーよー!」ってだけでいいんです。「ニュークスがイモータンジョーの命を受けて勢い良く飛び出した直後にずっこけるシーンは緊張と緩和を上手く使っているよね」なんて小難しく考えず、「面白えー!」って単純に笑ってしまえばいいんです。そんな映画がこの時代に観れるっていうだけで大感謝じゃないですか。現実を考えさせられる映画、いっぱい泣ける映画、胸がしめつけられる映画とまあ映画には色々ありますけど、観てるだけで楽しいっていうのは本当に大事なことだと思うんです。その映画の原点がこのマッドマックスにはあると思います。最高でした。DVDで観てもいいと思うんですけど、やっぱりこれは映画館で観てこその映画だと思います。ちなみに僕ももう一回映画館行く予定ですよ。次は4DXで観たいなー。

 

おまけの考察

最後に一つちょっと気になった点。かつてマッドマックス2の世界観が原哲夫大先生にインスピレーションを与え、その結果生まれたのが北斗の拳、というのはもう手垢がつくぐらい紹介されつくされてますけど、今回の怒りのデスロードって「逆に北斗の拳からインスピレーション得てるんじゃないか?」とすら思うシーンがちらほら見受けられますよね。棒飛び隊と木人形狩りのハブとか、鉄馬の女たちの種もみ抱えたまま死んじゃう婆さんとミスミのじいさんとか。他にもフュリオサが連れ出した女達のスタイルや、砦に残ってた小人の兄弟が息をするのもめんどくせえでお馴染みのゲイラっぽいとか。まあスタイルに関しては元々マッドマックス2由来だし、ゲイラは元々ジャバ・ザ・ハットがモデルなので、鶏が先か卵が先かって気もしなくもないですけどね。どうなんでしょう。誰かジョージ・ミラーに聞いたりしてないのかなー?